「I氏の事」(令和4年7月4日)
突然の訃報でした。
先日の朝、管理物件のオーナー様であるI氏の奥様からお電話があって、I氏の急逝を知りました。I氏とは何日か前に電話でお話をしたばかりだったので、「ご主人様とは数日前にお話ししましたよ!」と少し声を荒立ててしまいました。
会社の事務員からも「Iさんと社長はどこか似ていますよね」と言われていたし、私もそう思っていました。分かり合えるものを感じていたので、本当に残念で、奥様と電話で話しながら、涙がうるんでくるのを止められませんでした。
I氏は時々弊社においでになり、2階の応接机でお話をお聞きする事がよくありました。知識が豊富で、話題は政治から経済、時事問題、文化にまで及び、不動産に関しても逆にご教示いただくことも多くいつも有意義な時間を過ごさせて頂きました。
ある時、ポピュリズムやら「ポストツルース」と言った現代的な課題に話が及んだ時に、学校や職場におけるいじめの問題について語られ、「いじめの実態は外からは見えにくくなっているよ。」と語られてから、「だから、見えないものを想像する力が必要なんだよ」と言われました。
これから先は私の非現実の空想です。
何年か先の晩秋のある日、I氏がまだご存命として、私が人恋しい気分で、宮島か耶馬溪あたりに紅葉狩りにでも行きましょうか、とI氏を誘ったと仮定して、しかし結局は近くの港のかもめ広場あたりのベンチに二人で腰を下ろして、近所のコンビニで買ってきた缶ビールを片手に、停泊中の漁船やら高層ビルの遠景やら、目の前を駆け回る子供たちの後ろ姿やらを眺めたりしながら、「宮島もいいけど、僕はやっぱりこっちの方が好きだな」と笑われるI氏の屈託のない笑顔を空想します。
ご冥福をお祈りしますとともに、長年の御厚誼に感謝申し上げます。